Wi-Fiアクセスポイントの設置の注意点
複数台のWi-Fiアクセスポイントの設置は行ったことございますか?
スマートフォンの普及でIoT環境も拡大し、無線が当たり前ということもあり、ご自宅で設定されたことがある方も多いと思います。
ご自宅の場合は、他のアクセスポイントと干渉することは考えづらいため、ONUと接続して、接続したい機器を設定すれば、簡単にインターネット接続が可能です。
企業など事務所でアクセスポイントの設定を行う際には、互いに干渉しないように、接続する機器が強い電波を取得するような設定が必要となり、注意点が多くなります。
今回の記事は、複数のアクセスポイントを設定する際の注意点について記載したいと思います。
なお、アクセスポイントは機械ごとに特徴が異なる部分がありますので、共通で注意しなければいけない点を記載したいと思います。
まずは簡単に事前準備と設定方法をお伝えいたします。
【前提】
- RADIUSサーバは利用しません。
【事前に対応すること】
- 何台くらいのPCを接続するか。(周辺機器も接続するのであれば、周辺機器も忘れないように)
設定台数に応じて、DHCPの範囲を決めておきます。 - 何台くらいのアクセスポイントを設置するか。(今回は複数台ある想定でお伝えいたします。)
設定台数に応じて、IPアドレスとWi-Fiチャンネルを決めておきます。 - Wi-Fi認証をどれにするか。
- PC利用者とMACアドレスの一覧を作成する。
- アクセスポイントのWeb管理画面にログインするユーザの作成(特に作成しない場合には、管理者権限でログインしてください。)
【設定の手順】
- IPアドレスを設定してください。(DNSサーバやデフォルトゲートウェイも含めて)
- DHCPでIPアドレスを取得できる範囲を設定してください。
- Wi-Fiの規格を設定してください。(IEEE802.11g、11nなど)
- Wi-Fiチャンネル設定をしてください。(2.4GHz、5GHz)
- SSIDの設定をしてください。
ANY接続は許可しないようにしてください。関係ない方にアクセスポイントが見えてしまいます。 - 事前共有キーの設定をしてください。
アクセスポイント接続時のパスワードです。 - 追加認証を決めてください。
RADIUSサーバの方がセキュリティは高まりますが、今回はMACアドレス認証で進めたいと思います。 - Wi-Fiの認証を設定してください。
- MACアクセス制限を設定してください。
- アクセスポイントのWeb管理画面にログインするユーザの作成とパスワードを変更してください。
- 時刻設定を行ってください。
- ファームウェアの更新があれば、更新を行ってください。
- 設定した定義ファイルをダウンロードして、保存しておいてください。
万が一、アクセスポイントが壊れてしまったときに楽に復旧できます。
【注意点】
今回は下記3点の注意点をお伝えしようと思います。
- Wi-Fi規格
- Wi-Fiチャンネル
- Wi-Fi認証
1.Wi-Fi規格
Wi-Fi規格とは
Wi-Fiの規格は、通信速度や周波数帯域の違いによっていくつかのバージョンが存在します。以下に主要なWi-Fi規格とその特徴をまとめました。
周波数帯域 | 最大通信速度 | 特徴 | |
Wi-Fi 1 (IEEE 802.11b) | 2.4GHz | 11Mbps | 初期のWi-Fi規格で、障害物に強いが、速度は遅い。 |
Wi-Fi 2 (IEEE 802.11a) | 5GHz | 54Mbps | 高速通信が可能だが、2.4GHz帯に比べて障害物に弱い。 |
Wi-Fi 3 (IEEE 802.11g) | 2.4GHz | 54Mbps | 802.11bの後継で、速度が向上。 |
Wi-Fi 4 (IEEE 802.11n) | 2.4GHzおよび5GHz | 600Mbps | MIMO技術を採用し、速度とカバレッジが向上。 |
Wi-Fi 5 (IEEE 802.11ac) | 5GHz | 6.9Gbps | 高速通信が可能で、多数のデバイス接続に対応。 |
Wi-Fi 6 (IEEE 802.11ax) | 2.4GHzおよび5GHz | 9.6Gbps | OFDMA技術を採用し、効率的な通信が可能。多くのデバイスが同時に接続できる。 |
Wi-Fi 6E | 6GHz | 9.6Gbps | Wi-Fi 6の拡張版で、新たに6GHz帯を利用することで、干渉が少なく高速かつ安定した通信が可能。 |
Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be) | 2.4GHz、5GHz、6GHz | 46Gbps | Wi-Fi 6Eよりもさらに高速な通信が可能。チャネル帯域幅が2倍になり、遅延の削減や処理速度の向上が図られている。2023年12月に日本でも利用可能となった最新規格 |
お勧めの規格は?
現在のおすすめ規格は「Wi-Fi 6 (IEEE802.11ax)」とのことでした。
使用目的や環境によって変わります。
【理由】
- 高速通信:最大通信速度は9.6Gbpsと非常に高速で、大容量のデータ転送や高解像度の動画ストリーミングに適しています。
- 効率的な通信:OFDMA(直交周波数分割多重アクセス)技術を採用しており、複数のデバイスが同時に効率的に通信できるため、家庭内で多くのデバイスを接続しても安定した通信が可能です。
- 広いカバレッジ:2.4GHzおよび5GHzの両方の周波数帯域を利用できるため、障害物が多い環境でも安定した通信が期待できます。
- 省電力:TWT(Target Wake Time)技術により、デバイスのバッテリー消費を抑えることができ、特にモバイルデバイスにとって有利です。
※Wi-Fi 6EはWi-Fi 6の拡張版で、6GHz帯域を利用することでさらに高速かつ安定した通信が可能です。特に、干渉が少ない環境での利用が期待されます。
Wi-Fi 7がお勧めでない理由は?
- 対応デバイスの不足:Wi-Fi 7の320MHz幅の接続に対応するPCやスマートフォンはまだ市場にほとんど存在しません。そのため、Wi-Fi7ルーターを購入しても、対応デバイスがなければその性能を十分に活かせません
- コストの高さ:Wi-Fi 7対応ルーターはまだ新しい技術であるため、価格が高い傾向にあります。現時点でのコストパフォーマンスを考えると、Wi-Fi 6やWi-Fi6Eの方が経済的です
- 普及の遅れ:対応製品やサポートが限定的
- 実際の利用環境:現在のインターネット回線速度や家庭内ネットワークの需要を考えると、Wi-Fi 6やWi-Fi6Eで十分な場合が多いです。特に、一般的な家庭やオフィス環境では、Wi-Fi 7の最大速度を活かすシーンが少ないかもしれません
2.Wi-Fiチャンネル
2.4GHz帯で複数のアクセスポイントを設置する場合
2.4GHz帯のWi-Fiは、1から13までのチャンネルがあり、それぞれのチャンネルは22MHzの帯域を使用します。隣接するチャンネルは重複するため、干渉が発生しやすくなります。
【チャンネルの選択方法】
- 推奨チャンネル:1, 6, 11の3つのチャンネルが互いに重ならないため、これらを使用することが推奨されます。これにより、干渉を最小限に抑えることができます。
- チャンネル間隔:1, 6, 11以外のチャンネルを使用する場合は、少なくとも5チャンネル以上の間隔を空けることが必要です。例えば、1チャンネルを使用する場合、次に使用するチャンネルは6以上に設定します。
【注意点】
- 周囲の環境:周囲の他のWi-Fiネットワークや電子機器(電子レンジ、コードレス電話など)も2.4GHz帯を使用しているため、これらの影響を受けることがあります。
- 自動設定機能:一部のルーターには、最適なチャンネルを自動で選択する機能がありますが、手動で設定する方が確実な場合もあります。
5GHz帯で複数のアクセスポイントを設置する場合
5GHz帯は、W52、W53、W56の3つのグループに分かれています。それぞれのグループには以下のようなチャンネルがあります:
- W52:チャンネル36, 40, 44, 48
- W53:チャンネル52, 56, 60, 64
- W56:チャンネル100, 104, 108, 112, 116, 120, 124, 128, 132, 136, 140
W53とW56のグループはレーダー波と干渉する可能性があるため、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能が必要です。DFSが有効な場合、レーダー波を検出すると自動的にチャンネルが変更されることがあります。これを避けるためには、W52グループのチャンネルを使用するのが良いでしょう
【チャンネル固定】
DFS機能を回避するためには、W52グループのチャンネル(36, 40, 44, 48)に固定することが推奨されます。これにより、レーダー波との干渉を避けることができます
【チャンネル間引きの必要性】
5GHz帯では、用いる周波数が被らないようになっているため、隣接するチャンネルでも同時に使用できます。したがって、2.4GHz帯のようにチャンネルを間引く必要は基本的にありません
6GHz帯で複数のアクセスポイントを設置する場合
6GHz帯は、従来の2.4GHz帯や5GHz帯に比べて干渉が少ない「クリーンな周波数帯」とされています。
【チャンネル自動選択機能の利用】
6GHz帯では、電波状態の良いチャンネルを自動で選択する機能が搭載されています。この機能を有効にすることで、最適なチャンネルが自動的に選ばれ、干渉を避けることができます
【干渉波検出・回避機能の利用】
干渉波検出・回避機能を有効にすることで、周囲の電波環境を監視し、干渉が発生した場合に自動的に回避することができます。この機能を有効にするには、メッシュWi-Fi機能をオフにし、チャンネル自動選択をオンに設定します。
3.Wi-Fi認証
Wi-Fi認証の種類と特徴
特徴 | セキュリティレベル | 使用推奨 | |
WEP (Wired Equivalent Privacy) | 最も古いWi-Fiセキュリティプロトコルで、1990年代後半に導入 | 低い。既に多くの脆弱性が発見されており、容易に破られる可能性がある。 | 推奨されません。 |
WPA (Wi-Fi Protected Access) | WEPの脆弱性を改善するために導入されました。TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)を使用して、各パケットに異なる暗号鍵を使用 | 中程度。WEPよりは安全ですが、現在では脆弱性が発見されており、完全ではない。 | 可能であれば、WPA2またはWPA3に切り替えるべき。 |
WPA2 (Wi-Fi Protected Access II) | WPAの後継で、AES(Advanced Encryption Standard)を使用して強力な暗号化を提供します。IEEE 802.11i標準に基づいている。 | 高い。現在でも広く使用されており、家庭や企業のWi-Fiネットワークで標準的に採用されている。 | 推奨されます。ただし、可能であれば最新のWPA3を使用することが望ましい。 |
WPA3 (Wi-Fi Protected Access III) | 2018年に導入された最新のセキュリティプロトコルで、個別データ暗号化技術「SAE(Simultaneous Authentication of Equals)」を採用しています。これにより、パスワードの安全性が大幅に向上 | 非常に高い。最新のセキュリティ機能を提供し、現在最も安全な認証方式 | 強く推奨されます。 |