【在庫管理の重要性】

在庫管理は、企業の利益向上において非常に重要な項目です。経営面や各業態における適切な在庫管理のメリットをお伝えします。

・キャッシュフローの改善

　過剰在庫を減らすことで、キャッシュフローを改善します。企業は仕入れを行うため、多額の資金を投入しますが、過剰に仕入れることで資金の流出が増え、他の案件に充てることができなくなります。適切な在庫管理を行い、必要最低限の在庫を維持することで、効果的な資金運用が可能となります。

・コスト削減

　食品など賞味期限がある在庫の場合、在庫の賞味期限が切れれば廃棄となります。また大きな製品を在庫する場合、大量に在庫計上すると保管コストが増加するだけでなく、管理コストも増加します。適切な在庫管理を行い、在庫コストを最小限に抑えることができます。

・顧客満足度の向上

　在庫の持ちすぎは良くないですが、必要な商品を適切なタイミングで提供することで、顧客満足度を向上させることができます。顧客側もできるだけ在庫は持ちたくないため、適切な在庫管理を行い、顧客需要に迅速に対応し、満足度を高めることができます。

・経営の安定化

　在庫の適正管理により、経営の安定化を図ることができます。在庫管理が適切に行われていないと、急な需要変動や供給不足に対応できず、経営の不安定要因となります。適切な在庫管理を行い、経営のリスクを低減し、安定した運営を実現できます。

・需要予測の精度向上

　卸売業や小売業では、顧客の需要を正確に予測し、適切な在庫量を維持することができます。需要予測の精度が低いと、過剰在庫や不足在庫が発生し、顧客満足度の低下や販売機会の損失につながります。

・生産効率の向上

　製造業では、生産計画と連動した在庫管理が重要です。生産計画に基づいた在庫管理により、必要な資材や部品を適切に確保し、生産ラインの停止を防ぎます。製造業では他の業態と異なり、製品の在庫だけでなく、原材料や仕掛品の適切な在庫管理も重要です。

・効率的な物流管理

　物流業では、在庫の迅速な移動と管理が求められます。リアルタイムで在庫状況を把握し、効率的な倉庫管理と配送計画の連携により、迅速かつ正確な配送を実現できます。

【業種別の在庫管理の観点】

業種別の在庫管理の計上方法と重要性をお伝えします。

①卸売業や小売業

　卸売業や小売業では、多品種少量化が進んでおり、取り扱う商品数が増加しています。そのため、在庫管理の難易度が高まっています。以下のポイントが重要です。

・在庫計上

　在庫=仕入数量－売上数量

・在庫回転率の管理

　在庫回転率を適切に管理し、売れ残りを防ぐことが求められます。商品が長期間在庫として残ると、陳腐化や劣化のリスクが高まり、売れ残りが発生します。適切な在庫回転率を維持することで、商品の新鮮さを保ち、売上を最大化することができます。

・不良在庫の削減

　売れ残りや不良在庫を減らすための戦略が必要です。不良在庫は企業にとって大きな負担となり、廃棄コストや保管コストが増加します。需要予測や販売データの分析を通じて、不良在庫を最小限に抑える戦略を立てることが重要です。

・需要予測

　顧客の需要を正確に予測し、適切な在庫量を維持することが求められます。需要予測の精度が低いと、過剰在庫や不足在庫が発生し、顧客満足度の低下や販売機会の損失につながります。過去の販売データや市場動向を分析し、精度の高い需要予測を行うことが重要です。

②製造業

　製造業では、生産計画と連動した在庫管理が重要です。以下のポイントがあげられます。

・在庫計上

　部品（原料）在庫=部品数－（生産に使用される部品数×生産した製品数）

　仕掛在庫=生産数－生産によって消費された数

　製品在庫=生産された完成品－販売数

・生産計画との連携

　生産計画に基づいた在庫管理を行い、必要な資材や部品を適切に確保します。生産計画と在庫管理が連携していないと、必要な資材が不足し、生産ラインが停止するリスクがあります。生産計画に基づいた在庫管理により、スムーズな生産活動を実現できます。

・在庫の最適化

　過剰在庫や不足在庫を防ぐための在庫最適化が必要です。生産計画に基づいて適切な在庫量を維持することで、過剰在庫や不足在庫のリスクを最小限に抑えることができます。生産スケジュールや需要予測を考慮し、在庫の最適化を図ることが重要です。

・品質管理

　在庫品の品質を維持するための管理が求められます。製造業では、在庫品の品質が製品の品質に直結するため、在庫品の品質管理が非常に重要です。適切な保管環境や品質検査を行い、在庫品の品質を維持することが求められます。

③物流業

　物流業では、在庫の迅速な移動と管理が求められます。以下のポイントが重要です。

・在庫計上

　在庫=入庫数量－出庫数量

・リアルタイム在庫管理

　在庫の状況をリアルタイムで把握し、迅速な対応が求められます。物流業では、在庫の移動が頻繁に行われるため、リアルタイムで在庫状況を把握することが重要です。これにより、在庫の過不足を防ぎ、効率的な物流を実現できます。

・効率的な倉庫管理

　倉庫内の在庫配置や管理を効率的に行うことが必要です。倉庫内の在庫配置が適切でないと、ピッキング作業や出荷作業に時間がかかり、効率が低下します。効率的な倉庫管理により、作業時間を短縮し、コストを削減することができます。

・配送計画との連携

　配送計画と連動した在庫管理を行い、迅速な配送を実現します。物流業では、配送計画と在庫管理が連携していないと、配送の遅延や在庫不足が発生するリスクがあります。配送計画に基づいた在庫管理により、迅速かつ正確な配送を実現できます。

【在庫管理システムの機能】

在庫の入出庫や在庫量をリアルタイムで管理するための仕組みとして在庫管理システムがありますが、その機能をお伝えします。

・リアルタイム性

　在庫の状況をリアルタイムで把握し、在庫の過不足を防ぎます。在庫管理システムを導入することで、在庫の入出庫が自動的に記録され、リアルタイムで在庫状況を確認することができます。これにより、在庫の過不足を迅速に把握し、適切な対応が可能となります。

・自動発注

　在庫が一定の水準を下回った場合に、自動的に発注を行う機能があります。在庫管理システムは、在庫が一定の水準を下回ると自動的に発注を行う機能を持っています。これにより、在庫不足を防ぎ、適切な在庫量を維持することができます。

・需要予測などに連携するためのデータ分析

　在庫データを分析し、需要予測や在庫最適化に役立てます。在庫管理システムは、在庫データを収集・分析する機能を持っており、需要予測や在庫最適化に役立てることができます。過去の販売データや市場動向を分析し、精度の高い需要予測を行うことが可能です。

・在庫管理のしやすさ

　RFIDやバーコードなどのIoT技術を利用して在庫の入出庫を簡単に管理できる機能があります。IoT技術を利用することで、在庫の入出庫作業が迅速かつ正確に行えます。

・計画と実績の情報連携

　生産計画や販売計画と実際の在庫状況を比較する機能があります。これにより、計画と実績のギャップを把握し、改善策を講じることができます。

・見える化

　在庫の状況や入出庫の履歴、需要予測などを一目で確認できるダッシュボード機能があります。これにより、在庫管理の全体像を把握しやすくなります。

【在庫管理の課題】

在庫管理のメリットや重要性をお伝えしましたが、適切な在庫管理を実現することはなかなか難しいものです。そこで、在庫管理における課題をお伝えします。ここでの課題はExcelを利用して在庫管理を行っていることを前提としています。

①リアルタイム性

・在庫の過不足の即時確認が困難

　ある小売店が特定の商品をセール中に販売している場合、リアルタイムで在庫状況を把握できないと、在庫が切れた際に即座に補充ができず、販売機会を逃してしまう可能性があります。これにより、顧客の不満が増え、売上の減少につながります。

・迅速な意思決定が難しい

　製造業において、リアルタイムで部品の在庫状況を把握できないと、生産計画の変更や調整が遅れ、生産ラインの停止や遅延が発生するリスクがあります。これにより、納期遅延や顧客満足度の低下が生じます。

・在庫の移動や補充の遅延

　物流業では、リアルタイムで在庫の移動状況を把握できないと、倉庫間の在庫移動や補充が遅れ、配送の遅延が発生することがあります。これにより、顧客への納品が遅れ、信頼性が低下します。

②データの一元管理

・情報の分散管理によるデータの不整合

　複数の部署がそれぞれ独自のExcelファイルで在庫データを管理している場合、データの更新が遅れたり、異なる情報が存在したりすることがあります。これにより、正確な在庫状況を把握することが難しくなります。

③迅速なデータ分析

・大量データの処理問題

　多品種の製品や商品を扱っている場合、在庫管理が複雑化し、Excelではデータ量が多すぎて処理が遅くなります。これにより、リアルタイムでの在庫確認や需要予測の改善が遅れ、在庫過不足のリスクが高まります。

・属人性の高さ

　特定の担当者がデータ分析を行っている場合、その担当者が不在時や退職時にデータ分析のノウハウが失われ、他のメンバーが迅速に対応できません。これにより、分析の継続性が損なわれ、業務効率が低下します。

④迅速な棚卸作業

・棚卸作業の負荷

　月末に一度棚卸を行う場合、不良在庫の早期発見ができず、在庫の適正化が図れません。効率的な在庫管理を実施し、棚卸頻度を向上させることで、適切な発注や生産計画の立案を行います。

・システム在庫と実在庫の差異調整

　Excelでのシステム在庫の算出後、実在庫を確認するために棚卸を実施します。システム在庫と実在庫に差が発生した場合、原因確認をしますが、差異が大きいと調整に時間を要します。システム在庫と実在庫の差異が少なくなるように運営することが重要です。

【IT基盤構築での解決策】

在庫管理は、関連部署が多岐にわたる（製品や商品の配置場所も多岐にわたる）ため、人の手やExcelだけの管理だと限界があります。そこで、ITを活用した解決方法をお伝えします。

・リアルタイム性による自動発注

　在庫の入出庫を記録し、リアルタイムで在庫状況を把握することができます。在庫が一定の水準を下回ると自動的に発注を行う機能もあり、在庫不足を防ぐことができます。

・出荷の先入れ先出し

　賞味期限を持つ食料品を扱っている企業においては、先入れ先出しの考え方が非常に重要です。出荷を行う際に、商品在庫を確認し、先入れ先出しを行う在庫管理の仕組みがあり、誤出荷を防止することができます。

・データ分析

　データの分析ツールを利用することで需要予測や在庫最適化が期待できます。過去の販売データや在庫推移情報により、精度の高い需要予測を行うことができます。これにより、適切な在庫量を維持し、過剰在庫や不足在庫を防ぐことができます。

・IoT技術の導入

　IoT技術を導入することで、在庫品の状態をリアルタイムで監視し、品質管理を強化することができます。またRFIDを利用することで、棚卸業務の効率化を図ることができます。これにより、在庫品の品質を維持し、顧客満足度を向上させることができます。

・システム在庫と実在庫の差異調整

　製造業において、システム在庫と実在庫の差異調整を行う際、製品、仕掛品、原材料の種類が多いと差異調整に時間を要します。特に重量で棚卸を行っている原料などでは、必ずと言っていいほど差異が発生します。在庫管理システムによっては、システム在庫を実在庫に合わせるように差異調整を行う機能もあるため、在庫管理システムの特徴を確認することで、効率的な差異調整が可能となります。

【IT基盤構築の導入ステップ】

ITは導入すれば終わりではありません。導入の仕方を間違えると結果的に無駄な投資で終わってしまいます。そこで、IT導入における留意点をご説明いたします。

・現状分析

　現在の在庫状況を詳細に分析します。過去のデータを基に、在庫の回転率や過剰在庫、不足在庫の状況を把握します。現状分析により、在庫管理の課題を明確にし、改善点を見つけることができます。現状分析の際には製品や情報の流れを明確にするために、業務フローや情報のフローを作成することで、課題の明確化と共有化につなげることができます。

・課題設定

　現状分析を元にあるべき姿を定義します。長期的な課題と短期的な課題と分けることで、明確な目標設定が行えます。課題に関しては、上位の経営課題から下位の業務課題を明文化し、経営層から各業務責任者へ連携することで、意識統一を図ることができます。可能であれば、あるべき姿の業務フローを作成することで、目標設定を効率的に行うことができます。また、作成した業務フローをシステムベンダーに提供することで、認識の齟齬をなくすことができ、より品質の高い仕組み作りが可能となります。

・目標設定

　在庫管理の目標を設定します。適正な在庫回転率や在庫量を目指し、具体的な数値目標を設定します。目標設定により、在庫管理の方向性を明確にし、効果的な戦略を立てることができます。

・戦略立案

　目標を達成するための戦略を立案します。需要予測や発注計画、在庫配置の最適化などを検討します。戦略立案により、具体的な行動計画を立て、目標達成に向けた取り組みを進めることができます。

・プロジェクト体制構築

　立案した戦略を元に業務関係者を集めプロジェクト体制を構築します。プロジェクトを円滑に進めるためには経営層の関与も重要であるため、経営層にプロジェクト責任者を任せ、業務関係者と一体となってプロジェクトを進めることが重要です。IT基盤構築を行う際にはシステム部門の参加が必須となりますが、業務関係者に任せられる案件は業務関係者に割り振りし、プロジェクトを円滑に進められるように留意してください。

・システム導入

　在庫管理システムやデータ分析ツールを導入し、在庫管理の効率化を図ります。システム導入により、在庫管理の自動化やデータ分析が可能となり、効率的な在庫管理を実現できます。各システムベンダーが在庫管理システムを提供しているため、自社に合った在庫管理システムを導入するよう、システムベンダー比較を行うようにしてください。また、業務に合わない部分はシステムの改修を行うことがありますが、業務に合わせたシステム改修が大規模になるとコストが増加する要因となるため、可能な限り業務をシステムに合わせるように留意してください。

・運用／モニタリング

　立案した戦略を実行し、定期的に在庫状況をモニタリングします。日々の棚卸作業を行い、在庫を調整し、調整量が多い在庫に関しては原因把握と次の対策を取るようにして、適切な在庫管理を目指してください。モニタリングの結果は、財務諸表への連携、内部監査、課題解決につながるため、必要に応じて在庫管理方法の見直しを図るようにしてください。

在庫管理の重要性は業態によって異なります。また、扱う商材によって在庫管理方法も異なります。数量で数えられる商材もあれば、重量で在庫管理を行う商材もあります。しかし、手作業やExcelだけの在庫管理では限界があり、属人化につながってしまいます。

そこで、自社に合った在庫管理システムを選定することで、在庫管理の効率化を図り、財務状況の改善を目指しましょう。在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫状況を把握し、適切な在庫量を維持することができます。また、自動発注機能やデータ分析機能を活用することで、在庫不足や過剰在庫を防ぎ、業務の効率化とコスト削減を実現します。

在庫管理システムを導入することで、在庫管理の精度が向上し、業務の効率化と財務状況の改善が期待できます。ぜひ、自社に最適な在庫管理システムを導入し、適切な在庫管理を実現してください。